着物をきれいに保管するためにできることは?
皆さんは着物をどんな場所に保管されているでしょうか。私はりっぱなものではありませんが引出しが5段ある桐箪笥を使っています。以前、素敵な着物をみれば欲しくなる衝動を抑えられない時期があり、このまま買い続けると箪笥に収まらなくなる、どうしよう、と不安になったことがありますが、今はその熱は冷めて、全ての着物が箪笥の中に収まり、ほっとしています。
着物をきれいに保管するために、どんなことに気をつけたらよいでしょうか。少しばかりですが書いてみたいと思います。
着物と湿気と桐箪笥
着物と言えば桐箪笥がよいと聞きますが、なぜなのでしょうか。それは桐の特性にあるようです。桐は湿度が高くなると膨張して隙間をふさぎ湿気を中へ入れず、乾燥すると収縮して通気をよくする性質があります。
以前、悉皆屋さんとお話したことがあり、どうやったら着物にシミやカビがつかないよう保管できるか聞いたところ、着物は湿気に弱いので、とにかく湿気を避けることだとおっしゃっていました。なるほど、桐の作用が着物を守るわけですね。
それを聞いてからは、桐箪笥と着物箪笥用の除湿シートを購入し、雨の日には除湿機を使うなどして湿度を上げないように気をつけています。
箪笥に収納する場合のポイントは、上段に訪問着や留袖などの高価な着物や袋帯など出番の少ないものを、上段より湿気のたまりやすい下段に、出番の多い小紋や紬などをしまっておくとよいそうです。
※悉皆(しっかい)
しみ抜き、洗い張り、染め直しなど着物のメンテナンス全般を行うこと
着物をしまう箪笥が家にあればいいのですが、たとう紙の幅は85センチ前後あるので、それが入る箪笥となると幅100センチ位の大きさになり、一人暮らしのマンションでは置く場所がなかったり、持っている枚数によっては箪笥を買うまでもないような…。と、環境や生活の違いによって保管場所は人それぞれだと思います。
箪笥がない場合は、どのような保管方法があるでしょうか。
着物をプラスチック製の衣装ケースに収納できる?
クローゼットに置くようなプラスチック製の衣装ケースですが、密閉性の高いものは湿気がこもりがちになります。カチッとロック出来るような箱型だと、密閉性が高い上に、いつの間にか上に物をのせてしまい、そうすると開けるにも手間がかかりそうで、中から取り出すのが億劫になりそうです。
もし使うなら引き出しタイプの方が開け閉めが楽で上に物をのせても取り出すのに影響しないので、よいのではと思います。乾燥剤や防虫剤は必ず使用しましょう。必ず着物はたとう紙に入れて、乾燥剤などが直接触れないようにします。
着物をダンボール製の衣装ケースにしまってもいい?
ダンボール製の箱型や引き出しタイプの衣装ケースはどうでしょうか。紙は水分を含むとなかなか吐き出せない性質があり着物に湿気をもたらすので、ダンボール製の物はおすすめできません。
やむを得ない場合は、蓋をしない形にするなど通気をよくして乾燥剤はもちろん多めに。もしダンボール製の衣装ケースをクローゼットに置くなら、それは使わないで、たとう紙のまま置けるようにクローゼットの使い方を工夫する方がよさそうです。
着物で出かけて、脱いだ後に出来ることは?
着物で出かけて家に帰ってきた後、すぐにたとう紙に入れてはいませんか?
着物を着て出かけると、冬でも背中やお腹まわりが思った以上に汗ばむことがあります。たとう紙にしまう前に着物をきれいに保つために出来ることがあります。
まず脱いだ後はすぐにハンガーにかけて、身体のぬくもりや湿気を取りましょう。ハンガーは着物用があればよいですが、ない場合は洋服用のハンガーでも大丈夫です。その場合、クリーニング店などで使う細いタイプは着物の肩部分に負担をかけるので、厚みのあるタイプか、スーツをかけるような肩のところに丸みのあるハンガーをおすすめします。
絹は紫外線に弱いので、日光のあたらない部屋の中に丸1日位吊るします。キッチンとつながったリビングでは調理する時の油などの匂いが移ることがあるので気をつけましょう。帯や長襦袢や帯揚げも別のハンガーにかけて吊るします。
タオルで汚れがとれます
丸1日吊るした後は、たとう紙にしまいますが、着物を畳む時に清潔なタオル(フェイスタオル位がちょうどよいです)を片手で握れる大きさに畳んで右手に持ち、着物の裾を右手側にくるように広げて、身頃から裾へ向かって軽くなでるようにしてちりやホコリを払います。こうすることで、着物についた汚れのほとんどが取れるそうです。畳みながら、表に見えている面を全て撫でると着物全体の汚れを払うことが出来ます。
着物の虫干しってどうやってやるのでしょうか
長い間、袖を通してない着物は、5月や11月の晴れの日や2月の空気の乾燥した季節に虫干しを行うのがよいと言われています。2〜3日晴れの日が続いた時の10時〜15時位の間に日光のあたらない場所にハンガーにつるします(朝夕は湿度が上がるので避けます)。
この時、新たにシミやカビがないか確認して、何かあればしみ抜きや洗いに出すようにしましょう。同時にたとう紙に汚れやシミがある場合は、新しいものにとりかえます。たとう紙にしまう時は、着用後と同じようにタオルで身頃から裾へ向かってなでるようにして、ちりやホコリを落とします。乾燥剤や防虫剤のチェックも忘れずに。
虫干し出来ない時は?
虫干しするのが難しい場合、他にできることはあるでしょうか。
例えば「どんな柄行きだったか久しぶりにみてみようかな」と、たとう紙から出して空気に触れさせるだけでも入れっぱなしにしているよりよいそうです。
もっと手がかけられるようなら、着物を畳んだまま両腕ですくうように、たとう紙から出して、たとう紙にアイロンをかけて乾燥させるのも一つの方法です。
悉皆屋の人の話では、「一番よい管理方法は、年に一度は袖を通すこと」だそうです。機会があればぜひメンテナンスもかねて着物を着て出かけてみてはいかがでしょう。