なぜ若い人たちは着物を着なくなったのか
若い人は着物を着ない?
ブログの更新が空いてしまいました。
というのも、ここ約1ヶ月間、卒業式袴の発送作業を社員総出で行っておりました。
みなさまが素敵な卒業式を迎えられたことを切にお祈りいたします。この度のご卒業、誠におめでとうございました。
さて、話変わって先日もあった話。
モデルさんたちと着物撮影のロケに出掛けると、決まって街の人たち(特にご年配の方々)にこう声を掛けられます。
「若いのに珍しいね」
「若い人の着物は良いね」と。
もちろん他意はなく、良い意味で声を掛けてくださっているのですが、
(言われてとても嬉しいことなのですが)
そこには必ず 「若い方」「若いのに」 という言葉がセットでくっついてきます。
「若いのに上手に着物を着てるね」
「若いのに着物に興味があっていいね」
こう言っていただけることはとても嬉しい反面、
「若い人は着物を着ない」
という概念がすでに出来上がってしまっている、ということなんですよね。
そして実際に50代、60代〜の方々に比べて、圧倒的に普段着や正装としての着物を着る若い方が少ないのは事実です。
先週今週と卒業式のピークを迎え、駅や街中でも多くの学生さんたちの素敵な袴姿を見ることができました。
hataoriでもたくさんの学生や先生方に袴レンタルをご利用いただきましたが、
「若い方の着物」 = 「成人式の振袖や卒業式の袴といったイベントごとでの着物(=晴れ着)」
といった認識がほとんどなのだと思います。
(もちろん若い方の特権なのですが)
ですので、なんでもない日常で若い方が小紋や紬などをさらりと着こなしていると驚かれますよね。
それでは、なぜ若い人たちは着物を着なくなったのか。
そもそも”若い人たち”というのも、もはや語弊があるかもしれません。
「若い人たち」を含む「現代(いま)」の人々は、なぜ着物を着なくなってしまったのでしょうか?
着物を着ない3つの理由
理由は単純。
一言で言ってしまうと、やっぱり着物って圧倒的にめんどくさいんですよね。
着物に従事する者として着物を否定する気は全くないのですが、どうしても洋服と比べて面倒なことやハードルが多いのは事実です。
着物に精通している様々な方が既によく言われていることではありますが、3つの大きな要因が挙げられます。
1.馴染みのない装具
まず一つ目に、着物を着るためには揃えないといけないものがたくさんありすぎる。
着物、帯、帯揚げ、帯締めはもちろん、帯留め、半衿、伊達襟、襟芯、長襦袢、肌襦袢に裾除け、足袋、草履にバッグ。。。
着付けるために使用する腰紐や伊達締め、帯板、帯枕、和装ベルト、クリップなどなど。。。
そもそも聞き慣れない名称ばかりで何に使用するのか想像もできない、、、という方も多いのではないでしょうか。
「着物が難しい」という理由のひとつに、一着の着物を着るために使用する独自の装具がたくさんあり、どれも専門的な使い方をするものばかりだということです。
馴染みがないものには誰しもとっつきにくいものですよね。
2.自装のハードル
二つ目になんと言っても、ほとんどの人が自分ひとりでは着られない(着付けられない)こと。
着物に興味がある、着物をやってみたい、と思う人でも、ここで躓いて着物から遠ざかる人が多いのではないでしょうか。
洋服のように袖や首を通してボタンを留めれば着られる、というものではもちろんありません。
専門的な着方、着付け方があり、また着付けの綺麗さ上手さも見る人が見ればすぐに分かってしまうシビアなものです。
着崩れのお直しだって気にしないといけません。
自分で着れない衣服を日常的に着る、ということは不可能に近いですよね。
普段から日常的に着物を着ていらっしゃる方は、基本的に自分で着物を着ることができる方に限られると思います。
3.着物はお金と手間が掛かる
最後に、やっぱりお金が掛かる。(というイメージがある。)
たしかに、いくらレンタル着物といったサービスや化繊や綿の着物などのリーズナブルな商品が普及してきているとは言え、洋装に比べてお金が掛かることは否めません。
(それを打破しようとしているのがネットレンタルや、先日もブログに書いた観光地での街着レンタルなどだと思いますが。)
ちゃんとした着物一式を揃えようとすると何十万から時には何百万もしますし、高い着物や帯であればあるほどお手入れやメンテナンスにもお金と手間が掛かってきます。
昔は嫁入り道具の一つでもあり、着物は資産だと考えられていた時代がありましたが、現代の特に若い人たちからすると、何回着るか分からない着物一着に何十万も何百万もかけるのであれば、
数千円、数万円の洋服を何着も買いたい、ブランド品のアクセサリーやバッグを持ちたい、美味しいものを食べて旅行をしたい。
そう若い人たちが思う傾向は、普通と言えば普通ですよね。
そう考えてみると、なぜ若者が着物を着なくなったのか、という問いに少し近づいてきた気がします。
昔は着物に資産価値があり、誰もが着物を優美で貴重なものと考えてきたのに対し、
現代では着物に変わる洋服の多様化、贅沢な嗜好品や娯楽と流行、そしてインターネットにスマートフォン、特にSNSやアプリを通じての情報がふんだんに溢れ返っている。
そんな中で着物が昔日常のものだったのに対し、現代では着物は非日常になってきたのだと思います。
非日常を楽しむための着物。
まさしく京都や金沢、浅草などで街着レンタルを手軽にやってみようと思う海外旅行客や若いカップルなどが増えたように、着物は「ひとときの非日常を体験するための衣装」として認識し始められているようです。
着物と日本人の関わり方
こう考えてみると、今後、日本で昔のように誰もが着物を当たり前のように着て街を歩いている光景が再び訪れる未来はくるのでしょうか。
答えはおそらく、否です。
西欧やアジア、世界のどの国の伝統衣装もそうであるように、やっぱり着物という日本の伝統衣装も、現代人の生活環境においては不便なことも多く合理的ではないのが事実です。
ただ、昨今ちらほら見られ始めた着物女子たちの文化やコミュニティが徐々にできつつあることや、近年多くのブランドやデザイナーが挑戦しようとしている、「ファッションとしての着物」「洋服と着物の融合」といった新たな活動に期待をしつつ、まずhataoriとしては、成人式の振袖、卒業式の袴、結婚式参列の留袖や訪問着など文化的行事を通してレンタルご利用いただいたお客様に、「着物っていいな」 から始まるきっかけ作りを発信していければと思っています。
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hataori blog by Yozo Hirano 平野陽三 / なぜ若い人たちは着物を着なくなったのか
※2016年3月25日投稿、2017年6月20日リライト